ごあいさつ ―主要社殿の災害復旧を終えて―

阿蘇神社宮司 阿蘇惟邑平成28年4月に発生した熊本地震は、観測史上はじめて2度の震度7を記録した未曾有の大地震でした。地震は多くの人々を困窮させ、阿蘇神社にも甚大な被害をもたらしました。被災後しばらく心を痛める日々が続きましたが、そうしたなか全国各地の皆様から温かい励ましのお言葉と多大なご支援をお寄せいただいたことで、これまで前向きに復旧事業に取り組むことができました。皆様には、長きにわたり物心両面にご支援ご協力いただきましたこと、ここに深く御礼を申し上げます。

阿蘇神社は阿蘇山火口をご神体とし、肥後国の守り神として信仰をあつめてきた古社です。社記によれば、御創建は孝霊天皇9年(紀元前282年)とされています。二千年以上の長い歴史のなかで、これまで自然災害や人災などで社殿が困難に見舞われた記録が残っていますが、先人の努力により幾度となく復興されてきました。

このたびの熊本地震で被災したのは、天保11年(1840)から嘉永3年(1850)に竣工した一の神殿・二の神殿・三の神殿・楼門・神幸門・還御門の6棟で、平成19年に国の重要文化財の指定を受けたものです。なかでも倒壊した楼門は、九州最大の規模を誇り、阿蘇神社のシンボルとして広く人々に親しまれてまいりました。

重要文化財6棟の復旧は、国・熊本県・阿蘇市の補助事業として進められました。第1期工事(平成28年度~30年度)では、神殿5棟と神幸門・還御門の部分解体修理、倒壊した楼門の解体工事を実施しました。第2期工事(令和元年度~令和5年度)では、楼門の組立に特化した工事となりました。結果として、部材の約7割を再利用するとともに、構造補強により耐震性が向上しています。その復旧は技術的にも困難を極めましたが、関係者のご尽力により復旧を成し遂げることが出来ました。

並行した重要文化財以外の社殿復旧については、公的支援を受けにくいため当初は大きな課題となっていましたが、税制優遇の特例措置を活用するなどして、こちらも完遂することができました。なかでも熊本県産材を使用した拝殿の再建事業では、地元阿蘇中央高校様からもご寄贈いただきました。学校演習林の小さな苗木は、時に風雨にさらされ、成長するまでに幾度となく困難に立ち向かいます。先人たちの手で何十年も大切に育てられ、やがて多くの方々の思いと共に一本の太い幹に成長します。そうして受け継がれてきた木々を拝殿の再建に使用させて頂いたことは、神社の存在を考える上でも大変感慨深く、復興への思いを強く実感しました次第です。

神社は心のよりどころとして、古くから広く皆様に大切に守られてまいりました。そうした思いが込められ復興を遂げた社殿を前にすると、身の引き締まる思いが致します。

最後となりましたが、これまで当神社の復旧復興事業に温かいご支援ご協力いただきました全ての皆様に、心より謝意を表しますとともに、今後も当神社を温かくお見守りいただきますと幸いでございます。

阿蘇神社宮司 阿蘇惟邑

工事報告 境内現況図 技術者のコラム

復旧現況図

復旧現況図

災害復旧事業収入実績報告

  • R5年9月末時点の実績
  • 補助金については交付決定額及び概算予算額を含む

災害復旧事業の経過

復旧事業の経過

《実施中の工事》※12月完了予定

楼門に接続する透塀の再建

通常寄付(透塀の再建工事に充当されます)

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「デジタルツイン」技術で忠実に再現された阿蘇神社をご覧になれます。

制作・提供 マーターポート株式会社(撮影:2023年3月)

  • 阿蘇神社の境内

  • 復旧中の阿蘇神社楼門